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台湾ジャニーズファン研究

東方書店のオススメ書籍欄に掲載されていたので、興味を持って読んでみた。

台湾ジャニーズファン研究 (青弓社ライブラリー)

台湾ジャニーズファン研究 (青弓社ライブラリー)

 

 著者の方が東京大学大学院にて修士論文として作成したものを加筆修正してまとめた書籍らしい。

台湾は「親日」と表される事が多いですが、台湾における日本の芸能文化の受容のされ方から、日本アイドル文化の代表格としての「ジャニーズ」に対する受け止められ方、立場、ファンコミュニティの姿などを書き表した書籍です。

 

1990年代から日本のドラマが台湾で放送される事が多くなり「哈日族(日本オタク?)」が誕生したこと、21世紀ころからジャニーズ事務所が台湾に本格進出した事、などを前提に、台湾においてジャニーズのファン、ファンコミュニティというのはどういう形なのかを解説しています。

結論としては以下の文章に集約されていますが

 すなわち、ジャニーズを媒介にして、様々な文化実践の蓄積を通じて自立性を確立してきたファンコミュニティーという親密圏は、彼女たちにとって様々な社会関係の中でも極めて優先順位の高い関係性の圏域となっていて、そのなかでは異性愛的なコードよりも同性同士の「友愛」関係のコードの方が可視化され、高い価値を与えられているのだ。(中略)台湾のジャニーズファンは、同性同士の友愛関係に高い価値を与え、男性アイドル同士の関係性に友情を読み取り、その成立を実感することで快楽を享受するともに、同型の関係性を女性ファン同士でも再現しようとする。

非常に堅い表現で書かれていますが、引用文の前段で書かれている内容も踏まえてまとめると

  • 儒教的な考え(親を敬う的な)が強く家族内の繋がりが強い台湾において、「趣味同士」の繋がりをすべてとする、いわゆる日本で言う「オタク」的な集団がジャニーズファンには多い。これは台湾においては特異的で少し異質。
  • ジャニーズのメンバー同士の友好関係(「俺は◯◯が好きだ」的な発言)に一喜一憂し、時にはBL的な妄想もしてしまう。
  • ジャニーズが演じている友好関係を模倣・リスペクトし、そのような友好関係を同姓同士のコミュニティの中でも重視する

ということらしい。

また、ファン同士の団結力が非常に強く、KAT-TUNのコンサートでファン同士が連携して客席にペンライトで「KAT-TUN」の文字を浮かび上がらせた、といったエピソードも紹介されています。

 

本書の内容として、聞き込み調査のサンプル数も少ないですし、内容としてはもっと練り込みができたんではないかと思います。実体を知らない人間としては、この本で書かれている内容がどれだけ実情とマッチしているかは分からず、そうなると手法的に未熟な部分が信頼度を低下させる要因にもなります。

しかし著者もジャニーズファンで有るということで端々のエピソードは微に入り細に入っていますし、僕の知り合いの中華圏のジャニーズファンもだいたい似たような生態で「確かに……(;´Д`)」とうならされる部分もあり、個人的には参考になる書籍でした。