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アイ

ちーちゃんはちょっと足りない

2015年の「このマンガがすごい!」女性部門大賞に選ばれていたので読んでみた。

 正直、この漫画はあまりおもしろくなかった。感想を箇条書きに書くと

  • 最初、「ちょっと足りない」とされるちーちゃん(実際は普通学級で学ぶ事は難しいし、テストもあのような点数が取れるとは思わないくらい幼く書かれている)が、足らないが故に起こる騒動を面白おかしく描いているだけの作品だと思った。それはそれで弱い者いじめなので、あまり気持ちのよいものではない
  • 終盤、同級生でちーちゃんと同じ団地住まいのナツの心の葛藤が描かれ、それを足らないが故の無邪気さ・無知さにより救う役割としてちーちゃんが扱われるが、誤解を恐れずに言うとその救いは刹那的なもので、弱者の傷の舐め合いのような形でしか描かれていなく、何も救いではない気がする(作者は、その辺も意識してそのように描いているのかもしれないが)
  • お金持ちの家の娘である旭が成績優秀で、イケメンの上級生と付き合ったり、ヤンキーっぽい藤岡さんが妹思いの良い娘であったり、良い面を書かれる中、ナツはひたすら存在の卑小さだけが描かれている。成績が悪かったり、性格的にも暗部を描かれたり。「ナツにもこんな良い所が」というフォローが作中にあまり(もしくは全く)表れない。それらが団地住まいで貧乏だから、というところに帰結させようとしているのが非常に気持ち悪い

ようするに、貧乏はこんな風に屑だ、救いがない、って一方的に描きたいだけなんじゃないの?と訝ってしまうくらい、このマンガは救いが無いし、奥深い深淵な洞察があるわけでもないし、人に対する配慮が無い気がする。

 

僕も今思うと少年時代は、団地住まいではなかったけれど、もしかしたらそれ以上に貧乏で恵まれない環境だった。周りの皆が持っているものを僕はほとんど持っていなかった。だからといって、勉強は人並み以上に出来て進学校にいたし、こんな風にコンプレックスにまみれた生き方はしてなかった。物質に恵まれて無くても、図書館に入り浸って沢山の本と触れ合ったり、高校からはバイトを始め金銭的な面でも解放されたし、普通に満たされる事は、どんな貧乏でも可能だよ。

もちろん、僕と同等に貧乏な家の子供だった人が、その環境に押しつぶされていたケースも見たことある。家が豊かなのにドロップアウトした人も見たことがあるけど。要するに貧乏な家かどうかだけで物事を語れるわけでないことは、子供の目からみてもすぐ理解できることだった。

個人的には、貧乏だからダメなんだ、クズになるんだ、というようなポジションを取ってものを描くのは、それなりに意思と覚悟を以って表現をして欲しいなと思ったりする。

 

作者はそう描きたい、そう信じたいのかもしれないけれど、家が貧乏だから性格がねじ曲がるし世界が狭まるみたいな妄想は、正直なところ出来ればやめて欲しいし、非常に表現として浅い。「足らない」として描かれているのが基本ちーちゃんでありナツのみであり、彼女らが「貧乏」で(だから)「頭が悪い」「コミュニケーション能力が低い」という意味で足らないと描いているのは、あまりに安易過ぎる。それが故にこのマンガのナツの心境描写も、個人的にはリアリティが薄く非常に浅いものに見える。

だけれど、おそらくその部分が評価されて「このマンガがすごい!」に選ばれてるのは、非常に複雑に感じる。

もしかしたら「貧乏≒心根は優しい」というステロタイプから離れたところで人物描写をしたところが他のマンガとの独自性であり評価されているポイントなのかもしれないけれど、それだけをもって評価するなんてのもずいぶんに近視眼な感じもします。