アイ

川崎

例の凄惨な事件があったからそう思う、という訳ではないのですが、川崎市出身の人は、「川崎出身なんです」と言った時に周りから受ける反応に対して、悲哀めいたものを感じることが多いです。

それは、川崎市に対する認識が、100万人以上人口がいる大都市・政令指定都市であるにも関わらず、薄い、ということ。詳しい人で「多摩川の西側にある、東京都と横浜市に挟まれた場所」という認識が得られる程度で、総じて大抵の人は「川崎市 = 川崎駅のあるあたり」という認識です。そのために生じる誤解?と戦う事になります。

 

実際のところ、川崎は南北に細く長い作りになっており、南北のアクセス手段は基本的に南武線のみ、かつ市内に縦貫道路も整備されていないため、北部(多摩区麻生区あたり)に住んでいる人は川崎駅に行くよりも小田急線や京王線で新宿、町田といった辺りに行ったほうが近いのが現状です。北部に生まれ育った人は、川崎駅に行く事は極稀、なんて人が普通です。

中部(宮前区、高津区、中原区)あたりでも、川崎駅に出るよりは田園都市線東横線を用いて渋谷に出る方が楽だし時間的にも速いです。なのでこの辺に住んでいる人は、小学生の頃から渋谷を遊び場にするような人が普通で、かつ大人になっても川崎駅には役所手続きで必要な時以外にはまず行かない、という人が普通です。

 

そういった状況なので、川崎市の北部・中部出身の人に対して「川崎駅周辺」のイメージで捉えても、その人のライフスタイルや生い立ち的なものについては全く理解できない、という事になります。

北部・中部出身の人の視点で言うと、川崎駅あたりの事を聞かれても何も知らない、聞かれても困る、というような感じになります。

実際のところ、川崎駅周辺は、川崎北部・中部というよりも、大田区(東京都)や鶴見区(横浜市)あたりの住人の方がアクセスが便利だし、彼らにとっての場所というイメージがあります。

 

そんな感じで、交通による南北の分断は、住んでいる人の文化の分断も生んでいます。というとだいぶ大上段に構えすぎで論理も短絡な気もしますが。

一般論として、川崎南部のイメージは以下。

  • 工場が多い(公害都市川崎のイメージを今もなお引き継ぐ)
  • 土地が平ら
  • 自転車に乗っている人が多い
  • バス網が整備されている
  • 韓国籍の人が多い
  • 食べ物 = 焼き肉のイメージ
  • 自然はあまりない。

対して、北部・中部のイメージは以下

  • 多摩丘陵の中なので坂が多い
  • 平らな土地が無く、自転車や徒歩での移動が辛い
  • 車社会。自家用車を持っている人が結構多い。
  • ただし道が狭く渋滞が結構酷い(尻手黒川線や津久井道など)
  • ニューファミリー系の人がこぞって居を構えた事もあり、比較的中流層、プチ富裕層の人が多い
  • 多くはマンションになってしまったが、比較的今でも山間に畑が多い。20世紀梨の栽培が有名。北部住人は学校で習う。
  • 自然豊か。緑が多い(生田緑地/東高根森林公園など原生林が保護されているような場所もある)

川崎南部を「川崎国」と呼称するとしたら、北部・中部と南部では文化や環境が大きく異なり、別の国と言っても差し支え無いんじゃないかな、と思ったりしてしまいます。まあ呼称は別としても、川崎は南北で全く違う様相を見せる都市で、かつそのことが多くの人には理解されていないのが川崎市民が抱える悲哀のひとつです。