愛をこめて花束を
「紫陽花の花言葉って、なんだと思う?」
当時付き合っていた女の子と、そんな会話をメールでしていました。
「ちなみに、僕は、あなたは紫陽花のような人だと思っています」
相手の気持ちを盛り上げるわけです。どんな賞賛が待っているのだろう、と。
「移り気」「冷淡」「辛抱強さ」「冷酷」「無情」「高慢」
移り気で、冷酷で、高慢......
これでもかと、酷い言葉が並ぶ紫陽花の花言葉を伝え、彼女はちょっと怒りながら、いつもくだらない冗談をぶつける僕に「またか...」と諦めに近い感じで、その日は過ぎました。
そのちょっと後、6月のある日、その子と美術館に展示を一緒に見に行ったある日、こっそりと僕は花束を忍ばせていました。
その季節を代表する、大輪の、「紫陽花」の花束。
立ち寄った喫茶店で、その花束を彼女に差し出しました。言葉をひとつ添えて。
「僕は、あなたは紫陽花のような人だと思います。」
「またその話w」
「ひとつ、伝えてない花言葉がありました。紫陽花の花言葉は『元気な女性』。いつもまぶしいくらい元気なあなたに、この花束を捧げます」
紫陽花の花は、
花の色が変わることから「移り気」「浮気」などは、何となく納得するような・・・でも、とっても良い意味もたくさんあるんですよ!
- 元気な女性
- 辛抱強い愛情
- 強い愛情
- 仲良し
- 友情
- 家族団欒
- 平和
- 団結
周りの人の目もありますし、そうとう照れていた彼女ですが、その日はいつもよりずっと上機嫌でした。
superflyが大好きだった彼女、彼女の心の中にその時「愛をこめて花束を」の歌詞がリフレインで流れていたのかどうか、僕には想像しかできないけれど。
この込み上げる気持ちが愛じゃないなら
何が愛かわからないほど
愛をこめて花束を 大袈裟だけど受け取って
理由なんて訊かないでよね
今だけすべて忘れて 笑わないで受けとめて
照れていないで
6月のこの季節になると、ついついこの歌を口ずさんでしまうのは、僕もだいぶ未練がましい男だなと思ったりします。
あの時のお互いの気持ちの在り処がどこだったか、詳らかにはもう思い出せないくらいの、ちょっと昔の思い出。