チャイルド44
見てきました。
ミステリーということであまりネタバレに繋がる話は書かないほうが良いかなと思いますが、小並感あふれる感想を書くと
「自分の信じる正義を貫き通した男の物語で、国としての正義、組織としての正義と闘いながら、自分の大事なものを守り抜いていく物語」
という感じでしょうか。
映画冒頭のシーンを中心に書くと、ドイツ・ベルリン侵攻の際に、他の兵士たちが略奪を行っているなか、主人公のレオはそれを良しとしなかったため、略奪品を身に着けていないというひょんな理由からベルリン征服の証となる写真のモデルとなり一躍国の英雄になるエピソードや、
スパイ容疑の容疑者の捜索の際に、不要な殺人を犯した同僚の警官を叱責するエピソードなど、
孤児院産まれで食うものにも困る悲惨な少年時代を過ごしたレオが、周囲に流される事なく、抗うように自分なりの正義を守りにくエピソードが数多く描かれています。
そういう人間ドラマ的な観察も出来ますが、もちろん本作はミステリー作品の性質ももち、連続少年殺人事件の犯人の謎解きという要素も面白いし、全体主義的な仮想国家(圧倒的に「ソ連」がモデルだと言うのは嫌でも伝わりますが)の環境の中におかれた人々はどのような行動をとってしまうのかと言った思考実験としても興味深いです。
映画のストーリー進行としては、あまり過剰な説明なく、政治背景を事前に了解していないとわかりづらい部分も多々ある中、とても急テンポでお話が進んでいくので、1シーンも見逃せません。
社会派な重厚なストーリーも相まって、ミステリーとしては上級向けな気が個人的にはしています。謎が解けたあとの開放感・爽快感という部分についてはかなり欠けている気もするので、そういうものを求めると痛い目に合うかもしれません。
とはいえもちろんとてもよく出来た映画なので、知的好奇心ある方にはとくにお勧めできる映画です。
BGM、エンドロールで使われていた、おそらくロシア人作曲によるクラシック音楽がこれがまた重厚で、映画の雰囲気づくりに非常に貢献していたと思います。(誰の曲なのか、未だに調べきれていない)