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官逼民反

よく、「台湾の人は親日で、日本Loveなんでしょ?」って聞かれることが多いのですが、まあ僕も単なる中国語を少しかじっただけの日本人なのでよくわかりませんが、そんなに単純な話ではない気がします。

ここ150年ほどの歴史の中で、経緯あり日本の領土となり、日本人としての教育を受け戦争をし、敗戦後独立した、そんな「朝鮮」と「台湾」が国としてここまで道程を異なるものにしているのは、地政学的な問題、政治体制的な問題が大きい気がします。

台湾が未だに国連に「国」として認められてないという政治的に不安定な状態であること、冷戦構造のもと中国大陸の包囲網として日米の利害が一致したこと、日本メーカーのCMがひっきりなしに放送されるくらい商業的に結びつきが強いこと。

それらを前提とした日台の関係性を「親日」という言葉で表現するのは、さすがに単純すぎるのではないかと思います。

僕が感じるのは、台湾の方には常に「アイデンティティ」の問題が存在しているということです。中国大陸と同じでもなく、日本文化に染まりたいわけでもなく、台湾/formosa としてのアイデンティティを彼らは渇望している、と、いろいろと台湾の方と話したり、ニュースを見聞きしたりすると、感じることが多いです。しかし、民族のアイデンティティの拠り所である「国」という単位としても諸外国から認められない不安定な現実を、ここ150年の間台湾は強いられてきている訳です。日本の占領下であった時代のことを誇らしく思う人、感謝する人も居るであろうが、そうでない人たちが一定以上存在するのも事実です。

 

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"官逼民反" は、官(政府)が民衆を力で押さえつけることにたいして民衆が反抗を起こす様、を表す言葉です。

官逼民反_百度百科

歌の中で出てくる余清芳はこの人

余清芳 - 维基百科,自由的百科全书

この歌で歌われている心情が台湾人すべての心情では無いわけですが、この歌を聞いてそれでも後に、冒頭のような脳天気なことを言えるか、というと言えないのではないかな、と思います。

政府の、日米寄りの姿勢に相対すべき民衆の姿勢が「官逼民反」と表現されるかもしれないし、中国大陸寄りの姿勢に相対すべき姿勢が「官逼民反」と表現されるかもしれない。いずれにせよこれはまさに台湾の方のアイデンティティに関わる問題なのだと思います。

 

本当に良き隣人でありたいと思うのであれば、もっと相手を知るべきで、知るためには相手のことやお互いの間で過去に起こったことに関心を寄せるべきなのではないかな、とこの歌を聞くたび思ったりします。