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アイ

まほろば

僕がさだまさしという存在を認知した最初のきっかけは「風に立つライオン」でしたが、本格的にのめり込むきっかけになったのは、この「まほろば」という曲でした。

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バイオリンの印象的なリフ、三拍子で刻まれるリズムに載せられたその当時の僕にとっては耳新しい古典に基づいた言葉遣い、そんなものが印象的だったのは間違いないのですが、本質的には、描かれている世界観の新鮮さ、他の流行歌手との異質さが、強い印象を与えた理由だと思います。

例えば君は待つと 黒髪に霜のふる迄待てると云ったが それはまるで宛名の無い手紙

例えば此処で死ねると 叫んだ君の言葉は 必ず嘘ではない けれど必ず本当でもない

今も昔も、そこまで深く考えたうえではない表面的な言葉で「好き」とか「愛している」とか、社交辞令的な愛の歌が多く存在します。

しかしこの歌は、そういう一時の、その一時は死ぬまで誓えるとまで思えた感情ですら、いずれは変わる、いずれはなくしてしまう、と歌っています。

人の命が虚ろい、いずれ尽きるように、人の心もいずれは虚ろい尽きてしまうのか、だとしたら僕はこれから生きていくうえで、何を信じたら良いのだろうか。そんな事を思ったりした記憶があります。

この歌を12歳の時に聴いた僕が、「無常観」という言葉を知ったのは、もう少し後の事になります。

 

さだまさしは、この歌に代表されるよう、人の命をテーマとした歌がとても多いです。命は、人間の本質であり、常に逃げられないテーマです。そんな、ある意味地味だし、人によっては重すぎて「暗い」と忌避してしまいがちなテーマを正面から取り上げ続けているからこそ、世代を超えて、僕にもその魅力の一端が辿り着いたのかな、なんていまさらながら思ったりしました。