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フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで (仮)

フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで (仮)

 

 読んでみました。

しかしまあ、とんでもないタイミングに発売したもんだな、というのが個人的な感想ではあります。。

www.j-cast.com

nlab.itmedia.co.jp

 

ガールフレンド(仮)」を担当し、その功績もあって執行役員に抜擢された女性社員の本。

僕は「ガールフレンド(仮)」ならびに「ガールフレンド(♪)」をプレイしたこともなく、そういう意味でフラットな視点でこの本を読みました。

 

短くまとめると、ビジネス書として見た場合、他人が再利用可能な情報らしきものはほとんど無い本ではないかと思います。一人の若い女性の、自己紹介と、その辿った仕事の歴史が語られた、基本的には自己紹介書です。なので、ビジネス書として見た場合、読む価値はありません。

 

これを、「サイバーエージェントで働くこととはどういうことか」という視点で見た場合は、ひとつのサンプルになるのかなとは思います。

「若手を徴用する」「実績だけでなく、人となりも見る」「そんな藤田社長の寛容さと考えの柔軟さ」等々。

一番個人的に感じるのは、この作者の人は「フツー」という表現をされていますが、とにかく仕事人間なんだろうなとは感じます。手がけられたサービスに対する並々ならぬ愛情と情熱を文章から伺うだけでも、そう思います。

 

「"かわいい"の正体とは?」

という項を見てると、ゲームキャラクターにおける「かわいい」の要素に何があるか、それがどうあれば「かわいい」のか、という点について、数ページに渡り深い考察があります。所詮バーチャルな世界の、デジタルデータでしか無い対象にたいして、深く深く思索を巡らせている様が感じられるだけでも、その情熱というものを感じます。

なお、締めには、以下のような事がかかれていました

おしゃべりする彼女、歌を歌う彼女、意外なしぐさを見せる彼女 ......そうやって女の子のいろいろな面が見えれば見えるほど、どんどんリアリティーが増して、ユーザーは"脳内補完"が出来るようになります。

(中略)

リアル(現実)の女の子にも、もしかしたら同じことが言えるのかもしれません。得意なことでなくてもいいのです。とにかく、自分のいろいろな顔を見せること。これで相手との関係が深まっていくことは、間違いありません。

バーチャルが上位概念にあり、その次にリアルが比喩として出てくる。。すさまじい迫力を、個人的には感じました。

 

ビジネス書として見たらおそらく0点の本なのですが、そういう、若い女性が働く現場と、その懊悩が透けて見える本として見た場合は、何点かは与えられそうな気がする、そんな本です。

 

しかし、マイナス点が多い本であるのも否定できず、たとえば「デフォルト」という言葉は IT 業界では「初期設定」「標準設定」という意味があるのは理解しつつも、一般人には馴染みがなく、とくにバブル崩壊の話題にからめて「デフォルト(債務不履行、という意味では使って無さそう)」という言葉を注釈無しに使う点からしても、この本は添削や校正がかかっているのか不安になります。途中、明らかに間延びした章もあり、読むのが苦痛になります。

普段の一日の仕事の風景を紹介する章で、机にやってきたメンバーとの話が長引き、予定していたミーティングをリスケした、という記述も、普通のビジネスマンからしたら絶対ありえない行動だと思います(よほどの緊急度の高い話がメンバーとなされてたとしたら別ですが)。この章を読んだ大半の人は「ありえねー!!」という感想を持つと思います。意図的なのか、天然なのか...

 

そして、彼女は自分を「素人」と表現しつつ、自分の感性を信じ、チームとプロジェクトをマネージしているようですが、長くリーダーシップを取る立場に立つとした場合何かしらの「強み」というのが、やはりどうしても必要なのではないかと思います。

彼女は、自覚しているのか無自覚かは分かりませんが、「アメーバのメインターゲットであった若い女性層の感性と視点を的確に理解し、サービスとユーザーの橋渡しを高次元で行える」というのが最大の強みであり、だからこそ「勘」というのもはたらき、彼女の選択が結果として成功をしているのかなと思います。そういう意味で、彼女は素人ではなく最大の能力者で、それがチームの中でうまくバランスしていたのかな、と思います。

しかしそのポジションニングは、微妙なバランス感覚の上に成立しているように見え、いつまでの長続きする類のものには見えません。

また、「ガールフレンド(仮)」の開発経緯を見るに、彼女のまわりには大人で、能力もあり、相手を頭ごなしに否定せず疑わない性善説で行動し、ハードワーク出来る良き理解者のエンジニアに恵まれていた事が大きいのではないかと思います。それは、すべての会社で与えられる環境ではなく、「ガールフレンド(♪)」の大規模障害を見聞きしたりすると彼女の成功は彼女以外の「エンジニアの支え」というものが非常に大きく寄与していたのではないか、と感じられたりします。

そんなこんなで、彼女の感性が時流と離れ、会社として求められるものと離れ、今持っている「強み」を亡くした時にどのようになるのかは、本人しだいのところがあるのかな、と思います。

 

まあそんなネガティブ方面のことをいろいろ書いていてもしようがないので...

最後に、彼女が自分に自信をなくしかけていた時に、感銘を受けたというベテラン技術者から言われたという言葉を引用します。

「手を動かさなければ、成果は絶対に出ない。今できることを、なんでもやればいいよ」 

これは本当にその通りだな、と思います。僕も、万が一そういう状況に相対したら、同じことを言うと思います。

手を動かし続けて、行動し続けてきたことで、会社内で成功し、執行役員にまで出世した、一人の女性の自己紹介書、という本。

そんな本のご紹介でした。