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総理

 

総理

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 TBS政治部記者として、政治の中枢に近いところに入り込みジャーナリストとして活躍してこられた山口敬之さんのノンフィクション?的な書籍。

おもに活動されていた時期が安倍晋三内閣(一期、二期)に重なっていることから、当初の記述もその時期に著者が見聞きし体験したであろう出来事を中心にかかれています。

書かれている内容については受け取る人の政治的な主義主張により受け取り方が変わると思うので僕もここでとくに詳しく書きませんが、第一期内閣で屈辱にまみれた辞職をした安倍首相の第二期内閣での成長と、それをささえる参謀役・相談役としての麻生太郎の男気が印象に残りました。

そして、消費税を10%に増税出来るタイミング出会ったにもかかわらず、選挙に勝つための材料にするために延期を決断した安倍首相は、政局の読みとしては正しかったのでしょうが、政治家としては不可逆な大きな失策をしてしまったのだろうな、とも感じました。

 

この本の中身を見て、「安倍内閣の腰巾着」という批評というか悪口を著者に向ける人がいることは、想像に容易です。安倍内閣に対して批判的な人からすると、そういう捉え方をしないと情緒的に落とし所が無いと思いますし、実際僕もそのような視点で見てしまう部分も少なく有りません。

しかし著者も書いているように、政局の深いところまで入り込まないとその世界で何が起こっているかを知ることもできないし、ジャーナリストとしてはそこに入り込み、起こっている事をできるだけありのまま伝える、という姿勢もとても尊重されるべき姿勢な気がします。

その結果、安倍首相や麻生太郎の信頼を得、その政局の文脈に飲み込まれジャーナリストとしての公平性を失ったかのように見える山口敬之さんの振る舞いも、彼自身がその政局がどのような文脈で動いているかを体現する生き字引き・語り部として機能をすることでジャーナリストとしての役目を果たしていると思ったりします。