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データで読み解く中国の未来

 

データで読み解く中国の未来―中国脅威論は本当か

データで読み解く中国の未来―中国脅威論は本当か

 

 なにかでおすすめされていて積読していた本を読みました。

この本は350ページあり、やや冗長な文章も目につきますが、内容の論旨は終章を読めば綺麗にまとまっています。

 

日本は中国に、経済で、おもに製造業の分野で競り負けている。それはCO2問題を無視して安いエネルギー(石炭)を使い続けていることや、人権問題を無視して農民戸籍の人を安く使いたおしている事が大きい。

ただし、大きな成長エンジンの一つだった地方政府の不動産開発がいままでの通りは行えなくなり、不動産バブルの崩壊がはじまる。そのため今後20年の停滞(失われた20年)が始まるであろう。

それでも共産党は崩壊しないだろう。統治能力は高いし、貧富の差がはげしいと言われる農村部でも飢え死にが発生しているような状況ではないから。

そして、歴史に照らし合わせると、GDP が急伸した国家は、それまでの国際秩序を変更したいと考える。なので、中国も国際秩序への挑戦を続けていくだろう。

ただし、中国の覇権への野望は叶うことはないだろう。「中進国の罠」から抜け出せないまま成長力は鈍化し、人口減少も始まる。ただアメリカとの覇権争いについてはここ数十年のスパンで考える必要があり、それまでの立ち位置や戦略を日本は考える必要がある。

 

個人的には、西洋諸国がここ10年中国に訴え続けてきたことは「環境問題」であり「人権問題」であったわけですが、それがどのような意味を持っていたのかこの本を読んで理解できました。

CO2排出をはじめとして環境にたいしてケアをしないことで、他の先進国に比して低コストで経済活動が行えることができたのが中国躍進の一つの理由である。これにたいして先進国と同じキャップをはめることは、自分たちと同じ土壌で戦うことを要請していることで、中国の競争力をそぐことである。

農民戸籍と都市戸籍で明確に身分格差がある現場は民主主義国家の視点からみたら明確な人権無視ですが、その身分格差のおかげで今でも農民戸籍をもつ出稼ぎ労働者を安い労働力としてこきつかうことで産業の競争力を保つことができ、逆に人権を守ることを要請することで、中国の競争力をそぐことができる。

そして、それらをはねのけることで中国は成長を果たし、今や先進国に技術的な水準でも伍すことができる大国になってしまった、ということなのでしょう。

 

僕はこの本に描かれた分析や未来予測がすべて正しくその通りになることは肌感覚的には思えません。

一番大きな要素は、一般市民が、この本に書かれているように共産党に飼いならされた存在なのか、インターネット上で散見できるような自由を渇望する人たちなのか、によるかなとは思っています。

とはいえ、いろいろな示唆を与えてくれるという意味で良書だと思いました。