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シニア左翼とは何か

 

最近も盛んに活動を続けている SEALDs の活動について、論理的整合性に不安があるし、活動もどこまで本気かわからないカジュアルな内容になっていて、なんでこんな人達が支持されているのだろうか...とずっと思っていたのですが、この本を読んでいてわかりました。

シニア世代...60歳以上の左翼活動家に支持され、ある意味アイドル的な存在として好意的に扱われているために、彼らに気に入られ、支えられている、 という図式がはっきりあることがこの本を通じて理解できます。

 

SEALDs が中心となっていたとされるイベントについて、参加者の大半が若者「ではなく」、60歳を超える「シニア左翼」と称される人たちが占めていた、という事実の指摘から当書ははじまります。

シニア左翼には、もともと学生時代に学生運動に参加していて、社会の一線から退いた今「夢よもう一度」と集まってくる人、学者としての誠実さから行動に移した人、まったく運動に参加したことが無い初参加の人などさまざまのようです。

そんなシニア左翼の人たちが、どんな衝動に突き動かされ、何を達成したいのか、以下のシニア左翼の方々への運動参加により得られたものについてのアンケート?結果を見るとよくわかります。

 

①  高揚感。運動の盛り上がりに身を置くことができて興奮した。安倍政権への怒りを示せることにも。そして、国会前を決壊させたことに感動した。

② 嬉しさ。これだけ多くの人が政権妥当の声を上げる。これはかつて経験したことがないことで嬉しかった。

③ 楽しさ。SEALDs のコールに合わせて声を上げるのは、じつに楽しい。若い人のおしゃれなかっこうをみるだけでも目の保養になる。

④ ノスタルジー。道路いっぱいに広がってあるくフランスデモを思い出した。懐かしい。若いころの志がよみがえる。

⑤ 連帯感。むかしは、東大安田講堂の落書きにあった「連帯を求めて孤立を恐れず」といきがってはいたが、孤立すると何もできなかった。連帯を求めなくても、老若男女が勝手に連帯してくれた。一体感を得られた。

⑥ 若返り。70歳をすぎて国会前に足を運ぶのはつらい。そして、ずっと立って声を上げるのはとても疲れる... そう思っていたが、苦にならなくなった。健康維持のためにもよい。「安倍を倒せ」はストレス発散につながる。

⑦ いきがい。残りの人生はそれほど長くない。「終活」に向けて大きな生きがいを感じた。

⑧ 勝てる。安保関連法も原発政権交代、政策変更でなくなるかもしれない。法案成立で完全に負けたわけではない。勝機は十分にある。

⑨ 過去の精算。70年安保、69年全共闘での敗北を精算できそうだ。内ゲバの悲惨な状況にケリがつけられそうだ。

⑩ 安全と安心。火炎瓶や石が飛ばない。機動隊が殴りかからない。よほどのことがないかぎり捕まらず、安心して抗議できる、誰でも気軽に参加できるなど、敷居が低くなった。

⑪ 再開。全学連全共闘時代の同士、仲間と再会出来た。行方知れずの仲間の消息がわかった。亡くなった人もいるが、同窓会的な気分を味わえた。

 本書中にはまだまだ結果項目が書かれているのですが、全部転記するのもはばかられるので。

この内容を見れば察しの良い人はすぐわかると思いますが、要するに、最近行われている SEALDs を中心としたデモは、シニア左翼、おじいさんおばあさんにのために提供されたレクリエーション活動という意味合いがとても強い、といういことです。

SEALDs の人たちがどの程度真剣に世の中に対して変化を求めたかは別として、参加していた人にとっては、ストレス解消の道具であり、健康促進の場であり、昔の友達と再会する同窓会的な場である。そしてそれ以上の意味合いを持っている人も中にはいるかもしれないが、そこまで切実な思いを持った人も少ない。

言葉を選ばずにいうと、昨今の高齢者社会の中、SEALDs の若者たちは、老人のストレス解消や健康のために、ある意味老人介護的に献身的に活動している人たち、といえなくもないかもしれません。最近介護職の窮状についてニュースなどで語られる機会も増えてきましたが、その文脈で、SEALDs の人たちも引き続き活動をつづけるようですから暖かい目で見守ってあげると良いのではないか、と思います。老人たちのいいなり、奴隷的に、彼らが楽しめる場所を献身的に提供するための存在として。

 

真面目に言うと、この本の内容は、読んでいて頭に来ることが多く、単なる老人の回顧主義のため、同窓会的なノリのために、日本の政治がおもちゃにされていることに本当に本気で頭にきます。

日本の市民運動、活動家、の人たちは、ここまで堕落してしまったのか。と。

 

実際、当書は非常に硬派で、非常にいろいろな方にインタビューを試み(日本赤軍重信房子にインタビューを試みている)ており、そういう意味でも一読の価値がある本になっています。

そして、人により、今の状況をよく思っていない左翼活動家もかなりの数居る事も見て取れます。

僕は反体制活動に与することは一生涯ないですが、しかし彼らの心情を慮るに、左翼・新左翼の人たちの支援を受けて活動しているデモで「民主主義ってなんだ?」と民主主義を擁護するようなシュプレヒコール(コールではない)をあげる人たちを見て、苦々しく思わないわけがない気がしています。真摯に活動してきた人ほど。

 

本当にこの本は語るべきところが多い良書ですが、最後にひとつ、当書のまとめの項に「退役軍人と元学生運動活動家、歴戦の数々を語るメンタリティには通底するものがあるように思えた」とあったのが印象的でした。

退役軍人は、命がけで戦い、結果戦争に負け、命がけで戦ったのにその価値を無碍にするように帰国後の日本は自分たちの居場所がなくなってしまった。それでも歴戦の思い出を子どもたちなどに語ることを喜んでいる。

左翼の活動家も、その理念の崇高さなど以上に、「安田講堂で火炎瓶を投げた」というような語り口の方が、わかりやすい英雄譚としてウケが良いでしょう。そういう風に昔の事を思い出話として語るおじいさんおばあさんの脳裏に、どこまで当時の苛烈なまでの情熱が残っているのでしょうか。もしくはそんなものは元々なかったのでしょうか。

 

そんな、シニア世代の老後の思い出作り、やりがいづくりのために、介護予算のいくばくかを、シニア左翼の活動に回してあげても良いかもしれません。彼らの大半は本気で日本を良くしようとも、変えようとも思って無く、あくまで個人的な欲求のまま流されているだけなのですから。

 

 

ちなみにこの本は、以下のニュース記事を目にして気になったので買ってみました。

www.newsweekjapan.jp