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アイ

西行

願はくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ

そう詠んだ歌のとおり、春先、桜の咲く頃に入寂した西行

旅に生き、自然を詠み続けた人生の中で残された歌の数々は、一千年前の昔の言葉で記されているにも関わらず、今の専門的な古語教育を受けてない 21 世紀の我々でも容易に理解できるような響き、普遍性を持っています。

あらためて彼の作品を読み直して、なぜ彼の作品はここまで読みやすいのか、繰り返し読めば読むほどその言葉の普遍性に心を動かされます。

なにごとも 変はりのみゆく 世の中に おなじかげにて すめる月かな

 何ごとも 移りのみゆく 世の中に 花は昔の 春に変わらず

仏門に帰依したものならではの無常観と表現も出来ますが、桜を愛し、月を愛し、旅に生きた西行の飾らぬ思いがそのまま表されているからこそ、の世界観なのかなとも感じます。

 

そして、日々様々な些事に振り回されて生きている現代人として、幾年も重ねられてきた自然の営みに思いを馳せ、素直に心のまま、ぽつりぽつりと言葉に残していく。そんな行為がなんと贅沢で雅なものであるか、ようやく思い至るところがあります。

日々の営みに正面から向き合うこと、これは刺激が無いように見えたり、若い頃には特に退屈な所作に見えてしまいがちな気もしますが、なんと心が豊かで贅沢なことだろう、と最近は感じるようになりました。

西行の詩才の豊かさに比べると塵芥程度の人間ですが、日々を誠実に生きるために、西行のその歩んだ轍を心の則として、生きていこうかなと思ったりもする今日このごろです。

 

西行全歌集 (岩波文庫)

西行全歌集 (岩波文庫)