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ダークサイド・スキル

 

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

 

この本は最近読んだ経済書の中では抜群に面白かったです。

「ダークサイド」とか「裏技」という風な書き方がされているので、本来やるべきではない若干汚いやり方で世の中を渡り歩く方法について書いてあると思ったのですが、実際はある意味王道の、それでもあまり経済書では表立って書かれない泥臭いスキルについて書かれていた本でした。

 

7つのダークサイドスキルが紹介されているのですが、そのスキルの表題も、ちょっと刺激的な単語を意図的につけているだけで、実際は硬い経済誌でも書かれているような項目だったりします。

たとえば「KYな奴を優先しろ」という項は、今風にいうとダイバーシティについて書かれていた項です。あうんの呼吸で予定調和的に話が進むよりも、KY的に見えても是々非々で物事に取り組む人が組織では重要で、多種多様な意見が出てこないとイノベーションが産まれない。という話で、これは現代の職場で「多様性」が重視される文脈とまったく同じに思えます。

 

そんな風に読ませる工夫をしながら、この本は通り一遍の経済書には書かれない現場の修羅場をくぐり抜けてきた人でしかかけない思索のあとが色々感じ取れ、記されています。

7つのスキルについて覚える本というよりも、筆者の仕事における理念や信念みたいなものに感化されることが多い書籍だなと感じます。

たとえば、上記と同じく KY の項で、無邪気に自分の気持ちだけにしたがって KY な発言をしている人は重用されなくなるので、「自分が KY な発言をできるようにするためにも根回し(本書では CND =調整、根回し、段取)が必要だ」という話が目から鱗でした。

 

他にも、気になるセンテンスをいくつかピックアップしてみます。

私の尊敬する経営者の一人に、JFEホールディングス元社長の數土文夫氏がいる。彼は常々、部下に対して「皆さんの今日の活動は、PLのどこに紐付いているのか説明できますか。」と叱咤激励していたそうである。要するに、売上を上げるための活動、コストを下げるための活動、このどちらでもなければ、その日一日の活動は付加価値を生んでいないことになるとの意味だそうだ。

 

自分の心の奥底にある原点、価値観とは、別の言い方をすれば自分は何によって動機づけられているのか、ということになる。

(中略)

たとえば、異性関係にだらしないとか、名声に弱いとか、お金にルーズな面があるとか、ギャンブルに目がないとか、組織の中での出世欲など、人それぞれ、みんな誰でも下世話な欲望を持っている。

(中略)

まずは自分の煩悩は何かということをしっかりと自覚すること。自覚した上では逆転の発想で、それを自分自身の中で与件とすることが求められている。

 

あちこちに顔を出してご機嫌伺いをする廊下鳶をやっている人ばかりが出世する会社は、やはりどこかおかしいわけです。西郷隆盛が言うように、金も名誉も、そして地位も要らない。こういう奴が一番使いにくい。でも、それはその人がそれなりの生き方を持っているからで、それが何より大事なんですね。

 

この本の基本スタンスは、旧態然とした非効率でうまくいっていない組織をいかに立て直すか、という視点で書かれているように思います。そのために様々なダークサイドスキルを駆使して、強い個・強い組織を作っていくことが必要、と僕は受け取りました。

うまくいっていない組織を立て直したい人が読むと、変えていこうという活力が得られる本でもあるなと思います。