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世界をつくった6つの革命の物語

 

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

 

 

一年前くらいに邦訳が出た本にようやく辿り着いたのですが、とても面白かったです。
ここ100年前後のあいだに起こった、人類を不可逆に進化させた6つの発明について独特の視点で解説している本です。
その発明とは「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」

 

地球上のどこにでもある珪素を加工することにより人間は古来から小さいものや遠くのものが見えるようになり、大きく科学・化学が進化することに寄与しました。近代ではその光を通す性質から世界中のインターネットを支えるケーブルや液晶ディスプレイの基になり、ガラスは我々のIT生活の根幹をなす替えの効かない存在になりました。

 

冷却技術が存在しないころ、食料保存の問題、熱帯地方での居住の問題があり、今よりもずっと狭い範囲にしか居住できませんでした。人工的に冷やす技術が生み出されたことにより我々は熱帯地域でも居住することができるようになり、さらに卵子の保存に応用されるなど人類の生命誕生の選択肢を大幅に広げています。

 

音を遠くの人と共有することができるようになりコミュニケーションが高度化し、娯楽としての音楽が爆発的に普及しました。同時に小さな音を拡散する技術により多くの政治家がそのメッセージを伝えることにより世の中に変化がもたらされました。

 

清潔という概念が発明され、水などの汚染が疫病の原因であることが突き止められることにより、今まで人が密集しすぎると衛生問題が発生し突破できなかった人口の限界点を超えることができるようになり、大都市が成立できるようになりました。

 

時間を正確に測ることができるようになることで海路で自分がいる場所を正確に測定できるようになり、行動範囲が広がりました。また、同じ場所に同じように人が集まることができるようになり、労働生産性が向上しました。その技術は今は原子時計となり、その応用としてGPSのように世界中の位置測定にも活かされています。

 

光を人工的に容易に作り出せるようになったことで生活習慣が変わっただけでなく、レーザー光線の発明によりバーコードが生み出され大量の商品管理が行えるようになり経済が飛躍的に発展し、今は人工的なエネルギー源としての開発が行われています。

 

これらの発明は、すべてここ100年前後のあいだにもたらされたもので、それらの発明はひとつでも存在しなければ我々は今のように現代的な生活を送ることができないものです。

これだけ短い間に人類には多くの進化がもたらされていること、そのことにより居住可能な場所が増え、人口が飛躍的に増加し、我々の生きる選択肢が多様になっていること。

この本を読むと今では当たり前のように周りにあるものの存在の大きさを感じさせずには要られません。

そして、これからのイノベーションというものを考える上でも、参考になる示唆が沢山含まれている書籍だと思います。

たとえば昨今IT系で騒がれているブロックチェーンや中国での電子決済の仕組みなどは皮相の技術でほんとうの意味ではイノベーティブではなく、では何が長期的な視点でイノベーティブなものなのかというと例えばゲノム編集とかiPS細胞とかそういうものなのであろう、というような抽象的で根源的なものへの思索を巡らすことができます。


実は僕は数年前にたまたまNHK BS でやってた ”How We Go to Now” (日本訳は「いまに至る道」)という、アメリカ作の、顔立ちの整った論理的な話し方をする科学者が進行役のドキュメンタリーを見て、とても面白い内容だったのでそのときに再放送を全話録画しました。

その進行役の人が実は本著者のスティーブン・ジョンソンで、今改めて思うとこの本に取り上げられていたのと同じエピソードが当時の映像や現地取材をもとに描かれていました。この本を読んでその記憶が蘇り、あらためてそのドキュメンタリーを見返したりしています。

我々は良質な情報に実は囲まれているのに、意外と意識をしてないし気づけないものだな、というようなことも感じたりしました。