アイ

キャッシュレス

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世界に比べて日本のキャッシュレス導入が遅れていると、方々で指摘されています。

個人的な話をすると、僕は日常生活で一部を除いてほぼキャッシュレスな生活をしているので、日本はインフラはそこそこ整っていて、ただ消費者マインドとして使用を手控えているのかなという印象を持ちます。

一部は、外食ですね。チェーン店とかではクレジット払いや電子マネーに対応しているところも多いですが、個人のお店などではほぼ現金のみの対応ところが多く、この部分だけは妥協して生活しています。

 

ニッセイの基礎研究所が昨年末にキャッシュレスについての特集記事を3回に分けて掲載していました。

www.nli-research.co.jp

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この中で、消費者側の視点で、クレジットカードや電子マネーを使わずに現金を使う理由が「課題」として3点挙げられていました。

 

(1)「利用する機会や必要がないから」

現金で十分だという話と、個人の飲食店などを代表にクレジットカード決済に対応してない店がそこそこあるから、という理由が背景にあるのかなと思います。

現金と、クレジットカードや電子マネーが併用して使える環境だとした場合、基本的には消費者マインドの問題になり、経済合理性とは少し離れた話になるのかなと思います。

一般的によく言われていますが、クレジットカードや電子マネーはそれぞれ独自のポイント制度があり、消費をすればするほどポイントが貯まるため、クレジットカードや電子マネーが使える環境下であればそちらを使用したほうが金銭的メリットは大きいケースが多いです。

ニッセイの記事にもありましたが、

一方で、同じ調査において、クレジットカードを使用する理由として「ポイントを貯めるため」「支払い金額の大きさ」「手もちの現金額」「支払いの便利さ、早さ」も挙げられている。よって、クレジットカード決済に対して、ポイント等の経済利得だけではなく決済の利便性も重視されているようである。 

金銭的メリット以外にも支払いが楽、という点もあり、キャッシュレス生活にしたほうが消費者にメリットになることが多いのではないかなと感じさせます。

 

(2)「使いすぎてしまうかもしれないから」

僕はこの点については懐疑的です。というか消費者の思い込みに依拠した話でしか無いなと思い、ちょっともったいない気がしています。

月に一回明細が送られてくるまで利用額がわからなかった数十年前はともかく、今はリアルタイムで Web 上から利用明細が確認できますし、マネーフォワードや Zaim などの資産管理・家計簿アプリを用いるとその月に使った額が日単位で網羅的に確認できます。

家計簿アプリを日常的に使っていると、クレジットカードや電子マネーで決済した方が漏れなく家計簿アプリに連動してくれて、支出が発生した時には丁寧に push 通知までしてくれます。なので支出の把握漏れがなくなるため、現金を用いているときよりも「使いすぎてしまうかもしれない」という不安がありません。

どちらかというと現金決済の方がアプリの登録忘れが発生しやすいので、毎月の予算と比べて今月どのくらい使っているか等の把握が難しくなり、結果としてお金を使いすぎてしまう不安を個人的には感じます。

もちろんそれら諸々の環境が整う前は、「クレジットカードに支払いを依存している人≒お金の管理がゆるい人」というイメージを私も抱いていましたが、今はどちらかというと、現金決済を優先している人に対して「お金の管理がゆるい人」というイメージを持ちます。

 

(3)「現金以外で支払うことに不安」「盗難や紛失にあうかもしれないから」 

盗難という意味では、現金の方が盗まれやすいなと感じています。

クレジットカードの場合、番号が漏洩して他人に使われても、普段の購買パターンと異なる買い物が行われた場合クレジットカード会社から連絡が入り取引を止めてくれたりするので、個人的にはクレジットカードの方が安心感はあります。

以前、職場の人に財布を漁られ、カード番号を盗まれてECサイトで数十万円くらい購入された事がありましたが、即座にカード会社から異常検知した旨の連絡とカード停止の手続きをしてくれました。

でも、現金の場合、札を抜かれてしまうとその追跡は難しく、そういう意味で現金の方が盗難や紛失のリスクはずっと高いなと思います。

 

ただ、この記事でも書かれていたプライバシーという点では、確かにその不安は妥当なところもあるなと思います。

僕が今一番感じている現金の最大のメリットは「匿名性」だと思っています。現金決済する限り、基本的には「誰が」「誰に」お金を支払ったかという情報はキャッシュに直接紐づく形で保存されません。しかしクレジットカードや電子マネーの場合、そのお金の流れの情報は必ず保存され不可分になります。

ときには、何に使ったかを誰にも詮索されたくない商売行動もあったりしますし、そういう意味で「匿名性」を保った支払い方法というのは個人的にも残存してほしいなという思いもあります。

 

ただ、その匿名性が故に、莫大な地下経済マネーが発生している、という側面もあります。

日本「地下経済」白書(ノーカット版)―闇に蠢く23兆円の実態 (祥伝社黄金文庫)
 

ほぼタイトルだけの引用ですが、 10年前の試算で国の管轄外となっている経済活動が23兆円あるとされています。いろいろな手段があるのでしょうが、これらのやり取りの一つとして現金の手渡しで行われているとしたら、詳細なやりとりの特定も難度が高いでしょう。

 

モディ政権下のインドで高額紙幣を強制的に廃止したというニュースが昨年ありましたが、これもキャッシュレス社会へ強制的に移行することで地下経済の不透明な金銭のやり取りをなくしたいという政府の思惑があったようです。

blogs.itmedia.co.jp

 

国の為政者は税金の取りっぱぐれをなくしたいがために、どの国でもキャッシュレス化し電子的に決済情報を管理できるようにすることを望んでいるように見えます。かく言う日本も、一万円札などの高額紙幣を廃止するという動きがあるとかないとか。

nikkan-spa.jp

 

個人的には、出来る限り世の中が便利になってほしいなとは思っているので、キャッシュレス社会が進んでいってくれると良いなという思いは、基本線としてあります。

ただしプライバシーについては、現金の匿名性に依拠しなくても良いよう、キャッシュレスな決済情報についてもより一層保証されるような国の制度と、それを保証する第三者機関などの整備が行われてほしいなと思っています。すべて国が監視し筒抜けな世の中というのも、とても生き辛く感じるので。