アイ

フリーライター

数ヶ月前、会社でインタビューを受けたのですが、その聞き手の人がフリーライターの人でした。

いくつかテーマを設けて、それについてライターの方が聞き、僕が答える、という形式で行われました。

専門用語も飛び出すような比較的業界知識が無いと理解できない内容だったので「わからないことがあったら会話中でも後ででも、何でも聞いてくださいね」とお伝えしていたのですが、先方の質問に全力で答えてもライターは要領を得ない感じでしたし、わからないことがあるのか無いのかわからない状態でインタビューを終えました。

 

数週間後、記事が出来たというので確認依頼が来たのですが、いくつか致命的な問題があったので、結論から言うと僕がほぼ99%書き直しました。

致命的な問題とは以下のようなものです。

  • 事実関係が異なる内容が多い。主語となる人を取り違え、僕がやってないことを僕がやってることになってたり、その逆もあったり。
  • インタビュー中に話した内容の裏付けをしていない。専門用語について間違えた理解に基づく記述をしているし、出来事についてもライターが頭の中で想像してまとめてしまったので結果として事実ではない架空の出来事になってしまっている。
  • 文中の代名詞(私、僕、等々)や、用語を指す言葉のゆらぎが大きい。同じセンテンスなのに同じことを別の用語を使って書かれていて文章として自然に読めない。
  • 基本的な「てにをは」が間違っていて、自然な助詞の使われ方がされてない。

当時の事を思い出しながら自分でほぼ全文を添削したうえでその乖離を指摘し、結果僕の文章が採用されました。

 

僕の自慢話をしたいわけではなく、文章をまともに書けない人がライターを自称するに留まらず仕事にするのを辞めてほしいというわけでは少しあるけどそれを問題にしたいわけではないです。今回何が問題になったのかをもう少し文章化してみたいなと。

 

今回のインタビュー記事は、結果だけを見ると、ライターが介在する必要性が1%くらいしかありません。こういうケースでライターに仕事が依頼されるのは、以下を担保してくれることを期待しているからですが、それを満たしてくれなかったからです。

  • ただしい日本語で文章を作成することについての労力のアウトソース。
  • 専門家ならではの文章構成力。要約力。
  • 暗黙的なキーワード、重点・要点を抜き出し、それをわかりやすく他者に伝える能力。
  • 専門的な知見を基に、話者だけでは表現できない新しい観点や切り口を付加することで文章にさらなる面白さや深みを加える能力。

前者2つは、おそらくライターと呼ばれる人には最低限備わっていなければいけない職業スキルだと思います。それらをベースとして、優秀なライターを分けるポイントとしては後者2つが重要な要素になると思っています。

 

ただし、上記に無い要素として、こういう要素もあると思うのが以下。

  • 三者に意見を引き出してもらい、まとめることで、公平性を担保する。

正直、今回のインタビューも、会社として例えば僕の文章をそのまま提示すれば体裁が整えられたわけで、そういう意味でライターは不要だったケースだと思います。

しかし、体裁的には、「ライターの方がインタビューした」という体裁が保てたほうが、公平性が保てているのではないかという誤解や錯覚を与えることができるのかな、とも思います。これが、ライターが存在する価値があった1%の理由です。

もちろん、今回は文章のほぼすべてを書き直したので、実質的には意味がありません。

 

公平性も、ただ単にアリバイ的に第三者を立てるという行為は、本来的には意味は無いと思っています。

社会において、組織や組織を取りまく状況において、その分野において、「主語」となっている話者と、「第三者」である環境がどのような立ち位置であり、どのような価値観をもって物事が行われており、そのなかで話者がどのように主張しているのか。それらをそれぞれの立ち位置で「公平」に俯瞰できる能力こそが、本来的には求められるのかなと思います。

端的に言うと、話者の話すことを唯々諾々と聞き入れ垂れ流す、出来のわるいスピーカーのような役割では足らないということなのだと思います。そして、ライターが事実に則さずに自分の主張をただゴリ押ししてねじ込むのも少し違うと思っています。

 

 

現実問題として、上記のような要素を満たしているライターの方は、どの程度世の中に存在するのでしょうか?

実は今回のようなケースは初めてではなく、以前も同様のクオリティに遭遇しインタビュー記事自体をなかったことにしてもらった事もあります。

本当にすごいなと尊敬する人も多数いるなか、基礎的な文章能力について疑義を感じるケースもあります。

結局は、文章の作成能力や読解能力など基礎的な能力の話になるのかな、という思いもあり、以下のような本を思い出し暗澹としてしまうこともあります。 

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