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パスワードシンドローム

飲み会やランチの席で、僕がさだまさしを好きだって事を知っている人たちにさだまさしってフォークの人だよね」「なんで70年代の古いフォークソングをいまだに聴いてるの?」といった話をされることがたまにあります。

 

そういう人たちに、さだまさしは3歳からバイオリンの英才教育を受けていてクラシックの十分な素養を元に曲を作ってるんだよ、クラシック音楽と文学的な世界観の融合が魅力で、単なるフォークミュージシャンではないんだよ、と話をすると結構驚かれます。

精霊流し」「無縁坂」などでバイオリンを弾いてる動画を見せたりすると「私の知ってるさだまさしと違う!!!」と驚いたりする姿を見るのは楽しいですね。デビュー時からバイオリン弾いてるし、代表曲もバイオリンを弾く曲多いのに、お前の知ってるさだまさしはなんなんだ、という世界です。

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とはいえ、さだまさしも歌手デビューから45年、世間的に知られている大ヒット曲は70年代〜80年代に集中している「昔」の歌手に思われるのも致し方ありません。昔はお世辞抜きで流行歌手だったようですが、今は最先端の流行を作り出しているというわけでもありません。

「コンサートでは、どうせ昔の曲ばかりやってるんでしょ?」

そう言われることも多いのですが、その際は昨年発売されたこの曲を聴かせる事を常にしています。

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最先端とまで言うのは憚られますが、今風の4つ打ちのEDM風のBGMに乗せて、Auto-Tuneのエフェクトでギンギンに補正された機械的さだまさしの声が流れてくる。若者よ、これが21世紀だ(?)と言いたくなるような仕上がりになってる、この「パスワードシンドローム

アルバムにただ収められているだけではなく、昨年の45週年ツアーではオープニングにクラブのダンスフロアのような重低音のバスが鳴り響くアレンジの中、客席は総立ち、各々購入したLEDライトを腕にはめ(ちなみに「さだDaヒカルっ」という名前が付いている)、EDMのノリにあわせて60歳以上のジジババが中心の観客が踊り狂うという「世界の終わり」のような光景が繰り広げられていました。

昔のさだまさしの曲ばかり聴いているという人は、ちょっと趣味の柔軟性が硬直化している感じがしますが、それとは関係なくさだまさしは常に新しい面白いことをやっている人で、さだまさし自体に古臭さを感じるということはファンとしてはありません。特にツアーなどによく参加しているとよりそう感じます。

 

このパスワードシンドロームは、楽曲として見ても歌詞が良くできているなと思います。

パスワードにまつわる「あるある話」と、彼女との心のやりとり、恋愛模様をうまくかけ合わせた歌詞になっています。

パスワードシンドローム 歌詞

 

サビの「最初はやさしかったのに」は、パスワードの覚えやすさと、相手の心もようを上手くかけ合わせていますね。

「その窓を閉じないで」は、心の窓と、パソコンのウインドウをかけ合わせています。

「見つめ合うだけじゃ駄目なの?」iPhoneのFaceIDを皮肉っていますね。

 

楽曲全体でみると、CDに収録されているバージョンはちょっと完成度が低いかなと感じるところもあります。これはこの年にレコード会社をビクターに移籍し、そのプロモーションのために急いでCDを仕上げたせいかな、と個人的には思っています。

ライブバージョンはとても良いできだったように個人的には思います。

 

そういう感じで、さだまさしは新しいジャンルに常にチャレンジしていますし、その楽曲もCDで録音したものからライブを重ねるごとに形を変えて完成度を高めていきます。

固定観念ステレオタイプで評価するのはもったいないから、ぜひ健在なうちにライブに足を運ぶのが良いのではないか、そんなことを感じさせるミュージシャンです。