アイ

アストライド

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5年も前の曲ですが、最近よく聴いてます。

スガシカオが一時期のインディーズ活動を経て、再度メジャーデビューした際に発表された曲。

スガシカオ流の独特の言語センスと、それを印象的な形でメロディに載せるセンスが癖になる曲です。

そして今まで以上に、スガシカオ自身の境遇と重ね合わせたかのような、メッセージ性が強く出た曲ですね。

何度だって やり直せばいい

何度だって 恥ずかしくはないよ

ぼくが思う世界へ まずぼくが歩き出すんだ

 

僕は、スピッツもそうですが、だらしなくて頼りない、だめな男の心情を吐露するような曲を歌う人の曲を、よく聴きます。

自信満々な曲も良いし、必要ですけど、僕みたいになんの取り柄もなく日々ほそぼそと生きている人も多いわけで、そういう人と同じ目線に寄り添って、それでも少しでも前に進もうという曲に、心惹かれることが多いです。

 

しかしこの曲は、単純な前向きな応援歌としても良いですが、巧みというかちょっと何言ってるかわからないレベルの言語センスが素晴らしいなと思います。

大きな夢や希望をありきたりの表現で語るのではなく、生活に密接した極めて卑近な些事を取り出し、皆の生活の中にあった違和感やちょっとした不快感、もしくは喜びみたいなものを見つけ出し、皆にさらしていくスタイルは、スガシカオの強い個性だなと思います。

極めて鋭利な小さいナイフで皮膚の表層をチクって刺すような、鋭さと、残された傷のむず痒さみたいなものを感じます。

 

出だしのマスコットの例えも素晴らしいですが、やっぱ二番のこの歌詞でしょう。

この傷から出た ひどい膿を全部シールに変えて

365枚たまったら 引き換えるんだ

とびきり新鮮な希望と 誰にも負けない勇気に

以前スガシカオが「関ジャム」に出ていた時に、この歌詞は泥酔していた時に書き記したものだというような話をしていましたが、膿を集めて希望に変える、なんて正気の発想ではないですよね。こんな事考えたことも無い。

日常の些事の中から、誰も思いつかなかったような視点や表現で日常を切り取っていく、それがスガシカオの魅力だと思います。

 

スガシカオは、その言葉のセンスは本当に稀代の才能だと思っていて、十分にメジャーで成功している一流アーティストですが、まだまだ評価が低いんじゃないかなと思ったりもします。

そして、その歌詞は癖がそれなりにあり、万人にはなかなか受け入れられないのも事実なんでしょうね。そんなマイナー路線のミュージシャンがそれでもここまで支持されているというのが、スガシカオの才能の証明でもある気がします。